演劇ユニット　東京ナイフ2020

豆腐屋アコチャン

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豆腐屋アコチャン（菅谷晃子）のリヤカーで豆腐の引き売り物語（実話）。

私は転校してからいじめられていました。
「ブス」「汚い」「ゴミ」何故？どうして？、、、長く暗いトンネルに入りました。「私を無視しないで誰か話をして！」心の声は誰にも届きません。私は笑顔を失いました。そんな時、私は母から、あなたはお父さんの子じゃない、、、気がつけば私は家を出ていました。そして、転職を繰り返していた時にフリーペーパーで「腕より心で販売できる人募集。リヤカーを引いて街へ出て、ぬくもりのある仕事をしてみませんか？」という触れ込みに、私には腕なんてないけど心ならきっとある。と、豆腐の引き売りをはじめた。
ラッパを吹きながらの見ず知らずの人たちへの声かけ、はじめは怖かった。
しかし、しばらくして温かい声「お姉ちゃん、頑張っているね！」「えらいね」
どんどん豆腐の引き売りが好きになる私。
そして、毎週会えるいろいろなお客様のことがどんどん大好きになっていきました。

団地で一人暮らしの大人しいおじいちゃんの柳川さん。
いつの間にか柳川さんの家におじゃましてコーヒーを飲んでいる私。
ふと「やってみたいことって何？」ってと聞くと、柳川さんは「別にないな」
私は「え？考えてみてよ」しかし体調が悪く入院してしまった柳川さん。
元気づけようと、ほとんど毎日電話するようになっていました。　
「一生に一度、ディズニーランドに行ってみたかったな。まあ、死んでから行くか」「せっかくだから、生きているうちに行こう」
私は柳川さんとディズニーランドに行く計画をたてました。
そして、夢の国ディズニーランドへ。とても楽しかったし、笑顔の柳川さんも嬉しそうでした。
月日が流れ、家族のように感じていた柳川さんは天国へ旅立っていきました。
柳川さん、笑顔をたくさんありがとうございました。
また会えるのを楽しみにしています。

いつもの家の前、礒谷さんがラッパを吹いても出てこない。妙な胸騒ぎ。大家さんにドアを開けてもらうと、そこには誰にも看取られず亡くなった礒谷さんが、、、。
礒谷さんは根はいい人だが口が悪い。出会った頃は豆腐の引き売りする私に「なんでこんな仕事しているんだよ！」
私は「楽しいからだよ」と返していましいた。
しかし、いつの頃からか、磯谷さんの家で味噌汁やコーヒーをご馳走になり、お父さんと呼ぶようになりました。
そんな頃の磯谷さんからの手紙が懐かしい（いつもご苦労さまです。先日、君に助けられたと言ったよね。その時、わけがわからず不思議そうな顔していたよね。君と出会ったころ、それまで２６年間も付き合っていた女性がネパールの山で雪崩に巻き込まれて死んだんだ。悔しくて、許せなくて、心の中は真っ暗だった。その頃、君と出会って、いつしかお父さんと呼ばれるようになり心の中が晴れた気がした。そして雪崩で死んだ女性も君と同じ名前のアコ、私は不思議に感じたんだ。巡り会わせてくれたんだと思い、よーし！という気になれました。ありがとう。）
体がだんだん動かなくなって、口を開けば愚痴ばかり、でも私は礒谷さんに癒され助けられていたんだよ。
亡くなった礒谷さんの前で、しばらくずっと動けなかった。
「アコ、見つけてくれてありがとう」って声が聞こえたような気がした。
礒谷さん、愛をありがとう。

私は、おじいちゃん達の夢を叶えたい。それが私の心のプロジェクト。「一人で出来ない事ってなあに？」って聞くのが趣味になっていった。それは孤独死をたくさん見てきたから。

一人暮らしのおじいちゃんが誰にも看取られることなく亡くなる孤独死。
東京の抱える問題、老人の孤独死がテーマの作品です。